水彩畫階梯、色の調和
『みづゑ』第四十
明治41年8月3日
相隣接したる二色の視神經をして滿足せしむるとき、其二色を稱して相調和する色といふ。されば色の調和とは各色の配列が眼に映ずる際、其印象吾人に愉快の感を與ふるものにして、幾多の異樣なる諸色及び反對の諸色がよく相協和して美學的温和なる統一を得るにより目的を達せらる
補色の對比は固より調和すと雖も、同じ溶度同じ量を以てするときは強硬に且喧騒の感ありて温和なる調和を得難し。故に補色は直接に相隣るはよろしからず。即ち補色の結合は、互に澄み且強むるものなれば、甚だ見榮ありて煌々たる或は強烈なる効果を望む時はよけれど、常に視神經両者の間に休みなく浮動して忽ち厭倦の念を生ずべし(水彩畫階梯、色の調和)