水彩畫の紙(その二)


『みづゑ』第四十二
明治41年10月3日

 紙は畫くべき畫題によつて質を代へねはならぬ、緻密な畫には面の密なるがよくガサガサした處には面の粗なるがよい。
 空を細かい目の紙で畫き、地平線の處から下に粗い紙を繼いて野を畫いてある繪を見たが、是等はよく紙を利用したのである。
 ケントといふ紙も花など畫くに用ひられるが、大判か中判に限る。小判はあまり滑らかで役に立たぬ、そして、ケトンは表よりも裏の方の粗な方がよく、海綿で少しく強く磨すると畫きよい、樫の葉に空の反射がある柔らかい緑色などの感じは、ケント紙が一番よく出るやうである。
 彩料店に水彩畫紙といふ小さな粗い目の紙がある、誰れがつけた名であるか知らぬが、あの紙は水彩畫には不適當である、繪具が伸びぬ、色は冴えるが洗ふことも出來ぬ、目の間に繪具が溜つてムラが出來る。懲りた人が澤山ある、まづ用ひぬ方がよいであらう。
 木炭用紙を使ふ人がある、これも洗ふことが出來ず、輪廓が固くなる、一度繪具を着けると脹れて容易に乾かず、二度目の繪具をつけるのに困る。元々木炭用に出來た紙であるから。水彩に用ゐる方が無理である、この紙よりもB印畫學紙の方が遙かに増しである。

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