水彩畫の紙(その三)


『みづゑ』第四十二 P.14
明治41年10月3日

 ワツトマンは、濕氣のためにドーサが抜けて、繪具を着けると班點を生ずることがある、それ故紙には年號が漉き込んである。今年出來た紙でも保存が惡いと使用に耐えぬ、ブリキか紙の筒へ入れて濕氣のない處へ置くとよい、階下よりは二階がよい、火鉢などのある上の天井へ吊して置くのもよい、筒の中へ石灰を紙に包んで入れて置てもよい、時々天氣のよい時出して日光に晒すとよい、保存さへよくば三年や四年は大丈夫である。
 ワツトマンのドーサの抜けたのか通常風を引くといふ。
 OW、は風を引かぬといふがアテにならぬ、ワツトマンよりは保存期が永いがやはり風を引く。
 紙は凡て斤量で賣買するものであるが、ロンドンあたりでワツトマンを買ふと日本のよリ小さい、畫學紙同形でそして紙が厚い。日本に來てゐるのは圖引用だといふた人がある。
 スケツチングプロツクといふて、紙を幾枚も重ねて四邊を糊で貼つてあるものがある、これにはワツトマンも畫學紙もあつて、旅行用、スケッチ用に一寸便利であるが、水貼でない爲めに畫くとき紙が脹れて困る。

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