鹿の糞(その二)
『みづゑ』第四十二 P.18
明治41年10月3日
■暑いので戸を閉めるなといふ夜分戸を閉めねば主人に叱れるといふ到頭下女と喧嘩してグヅグヅ言ふと椽から突落すぞは大に振つたね■對山樓には大佛と申女中あり曲線美と申下男あり■對山樓の連中には中々藝人が多い特にハーモニカの名人が居た■夜る床に入つてから一曲やつて貰ふと坊ちやん漣中美聲をきゝつゝスヤスヤ寝入るさまば實に無邪氣だ■對山樓のオトツサン即ち富田君は講談も甘いが親切で滑稽のうちに快活と眞情がある、一同より御禮を申上る