パレット (その一)


『みづゑ』第四十五
明治41年12月3日

 戸外寫生用として一番使ひよいのは二枚折パレツトの大きいのである、繪具はチユーブでもカツプ入でもまたはケークの軟かに練つたのでもよい、入用だけ出して置くので、專門家は多く四寸に八寸位ひの大なるものを用ひる。
 次に多く用ひられるのは練製繪具の入つてゐる箱で、これは兩方にパレツトのある方がよい、一方の平面の分は小部分の繪具をとき、一方の皿形の方で空や水など澤山の繪具を溶くに用ひる、これも小なるものよりはなるべく大なる方がよい。
 ブリキ又は陶製の、楕圓或は角形のパレツトがあるが、これは室内用であつて戸外では不便である、縁へ出した繪具の使ひ殘りの仕末にも困るし、空など塗る時に、澤山の水を湛へることが出來ぬため、十六切位ひのものならよいが、八ッ切以上になると二度も三度も新に繪具を溶かねばならぬからスケツチの場合など殆ど役に立たぬ。

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