水彩畫の繪具(その一)


『みづゑ』第四十六 P.6
明治42年1月3日

 水彩畫の繪具には、練製と乾製と粉末の三種がある、練製はモイストカラーとよばれて、錫の筒(チユーブ)入りと小なる陶器(パンツ)入りとの二種ある、乾製(ケーク)は長方形の固形體であつて、練製も乾製も大小二種ある。粉末製は小さな壜入りで。アラビヤゴムに溶いて用ひるもので、普通の場合には使用せぬ。繪具は以上の如く三種に分れてゐるが、價は皆同一である(色によつて其價に差異あれど)、量は一番ケークが多くパンツは少ない。
 專門家は多くチユープを用ゐる、パレツトの上に入用丈け出すのに至極便利であるが、繪具が古いと硬くなつて筒の口から出なくなる、それ故コバルトとかインヂゴーとか、常に多量に用ゐる繪具のほかは、小形のを買つて置くとよい、そして買ふ時押して見て硬くないのを選ぶがよい。

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