東京の彩料相場


『みづゑ』第四十六
明治42年1月3日

 繪具類は近來各商店に於て競爭のため各種の繪具及紙類の價は大に下落しおサ、左に最近取調れる代價を記さん
 竹見屋(神田區表神保町一番地)
 一B印(フランス)小形チユーブ各色共金五錢均一
 一仝大形は目下品切
 一仝乾製は色によつて價に相違あり一個十錢、十五錢、二十錢、三十錢
 一ニユートン製チユーブも色により價に高下あり、一個十九錢、三十銭、四十錢、但品數多からず
 一仝乾製は三十錢、六十錢、八十錢
 一ワツトマン紙1908年分一枚二十七錢
 文房堂(神田區表神保町二番地)
 一B印(フランス)小形チユーブ各色共一個金五錢均一
 一仝大形品少し十八錢、二十五錢、三十五錢、五十錢
 一仝乾製色數僅少
 一ニユートン製チユーブ十九錢、三十錢、四十五錢、六十五錢、
 一仝乾製三十五錢、七十錢、一圓五錢、一圓四十錢
 一ワツトマン紙1908年分一枚三十錢
 熊野屋(神田區小川町一番地)
 一B印大形チユーブ十二錢、十六錢、二十錢、三十錢、
 一ワツトマン1907年分(請合)一枚二十五錢
 熊野屋には他の品はなし
 以上
 これで見るとフランスのチユーブの小の方は、文房堂も竹見屋も同價、大の方は一番熊野屋が廉價で、仝乾製は文房堂にもあるが價は粗ぼ同樣ならん。ニユートンのチユーブは竹見屋も文房堂も同價ではあるが、色によつては竹見屋の方が五錢廉い、仝乾製は文房堂の方が竹見屋よりは五錢若くは十錢二十錢も高い。ワツトマンは竹見屋が一番低價で、熊野屋の一昨年の分も保存がよいから斑點の出ることはない。
 營業目録は普通賣價が書いてあるので、各彩料店では地方の註文主に對しても、目録に拘はらず時の相場で諸君へ送つてゐることゝ思ふが、地方の人は荷造料を出したり、送料を出したり、注文にも金が入用といふ次第で、都會の人より多分の費用が掛るのであるから、營業者は東京で賣るよりも一層勉強して貰いたいものである。

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