米國理學博士田村哲氏『晴空の色』中學世界


『みづゑ』第四十六
明治42年1月3日

 米國理學博士田村哲氏は中學世界に於て『晴空の色』を説かれた、その説によると、日中と日出日沒との區別が出來るが、晴天太陽の高く昇つた時は碧色透明なるが、太陽の附近と地平線に近い處だけ蒼色薄らぎ稍々紅橙色を帶ぶる、雨後の空色は非常に青く、海上は陸上よりも濃厚である、平地よりも高山の頂から眺めた方が空の輝きは減ずるが青みは濃い、世界中で晴空の最も青い國はまづ伊太利と日本であるらしい。
 日沒の時の太陽の有る方面は黄色を呈し、太陽から遠くなるに從つて紫紅色に移り、漸く遠きに從つて濃蒼色を呈す、この紫紅色帶をツアイライトといふ、ツアイライトは太陽が地平線下十八度に到る迄繼續するものである、日出の時には、晴空は日沒の時と同樣なれど現はれたる色の順序は反對に、慨して日沒の時よりも色が薄い云々。

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