寄書 尾瀬沼號を見て

長谷川年行
『みづゑ』第四十六
明治42年1月3日

 臨時增刊尾瀨沼面白く拜見しました、口繪『尾瀨スケツチ』さぞ原畫は如何にと慕はしく思ひます、次號なり何時なり其一葉なりとも原色版として、遠き紀川の密柑黨の味より外に知りぬ私に是非是非拜見さして下さい。
 尾瀨行當時の御旅行はさこそと偲び居るところ、記行を拜見すると趣味津々たるを覺えます。
 中繪の八木氏の『湖畔の雨』森島氏の『自然の庭』赤城氏の『白樺』そのアッサリしたる妙手腕唯々感服、若き畫人の活動の御身の上戀しく慕しく懷かしく何とも角とも一種の感にうたれて恍惚たること久し。
 アヽ尾瀨沼、繪畫木版の四人の方のスタイルと見比べて思はず微笑を洩しました

この記事をPDFで見る