水彩畫の繪具(その五)
『みづゑ』第四十七
明治42年2月3日
水彩畫の繪具(その五)
學生用繪具でも差支なく使用されるのもあるが、中にはまるで色の異つてゐるのがある、エルローオークル、ヴァーミリオン、ニユートラールチント、エメラルドグリーン、ガンポーヂ、オレンヂ、ローズマダー、ピンクマダーの類は殆と用ひられぬ、コバルトも不透明で白が入つてゐるやうでょい色は出ぬ、ローズマダーの。如きは普通壹圓もするのをタツタ五銭で賣るのであるから、テンデ其色が雲泥の相違を呈してゐる。
ラフアエル會社の分は、ニユートン製の美術家用と殆ど同一のやうに思はれる、或は品質が勝つてゐるかも知れぬがまだ深く使用して見ぬ。村田や、花廼屋製の分は全く使用せぬから其良否を明言しがたいが、如何に愛國心がないと曰はれても、大切な製作をこれ等の繪具で描く氣になれない、無論中には充分使用に耐へる繪具があるには相違ないが、製法も不完全のやうに思はれるし、其價も比較的安くはないやうである。