水彩畫具の話(その六)


『みづゑ』第四十七
明治42年2月3日

 よい繪具といふのは、比較的變色せず、分子が細かく、正しき色調を呈し、紙の上の延びのよいのを指すのであるが、黄色に屬するものは、如何に高價でも變色は免れない、ガンボーヂは黄のうちで如何にも鮮やかな色を出すが、乾くともう黒ずんで仕舞ふ、そしてワルク光澤があつて下品である、これに代る透明の黄として、オーレオリンはよいが、あまりに高價である、そして全然不變色といふことは出來ぬ、パーマネントヱローは其名の示す通り永久であるべき筈だが色はよくない、其他クロームエローの如きは恐ろしく變色する、ガドミユームは白紙へ點じて其儘置くと美しい發色を保つが、重潤すると多くは變色する、極めて危險である、特にヱメラルドグリーンと混ぜると見てゐるうちに色が黝くなる。(つゞく)

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