紹介
『みづゑ』第四十七
明治42年2月3日
◎方寸畫暦
本年の日曜表に添へて百穗、柏亭、未醒、鼎、白羊、恒友諸氏の筆になれる十二枚の着色石版畫あり漫畫帖として好事家の喜ぶものなるべく、製本また頗る氣の利たるものなり(定價二十錢、本郷千駄木林町方寸社發行)
◎日本名勝寫生紀行第二巻
神田表神保町中西屋
四六版二百十五頁定價金三圓五十錢體裁第一巻に似て更に美を極む、挿畫の筆者は岡野榮、中澤弘光、山本森之助、小林鍾吉、跡見泰の五氏その種類は鉛筆畫、鉛筆淡彩、、毛筆淡彩、色鉛筆、ペン畫、水彩畫、油繪等、版は寫眞版、木版、寫眞二色版、四色版等にして其數實に八十餘、他に二色刷のコマ繪多數を挿めり、場所は利根川、銚子、房總半島、箱根舊道、口伊豆、奥伊豆等にして紀行文は總て小林氏の情趣多き筆に成れり。
此書を手にする時第一に感ずるは出版者の營利を目的とせずして發行せられし其義舉にあり、色版かくの如く多數に、加ふるに體裁、用紙、活字の鮮明、手數多き全誌面の二色刷等寸分の隙なき注意は、著者よりもより多く出版者に向つて感謝の意を致さゞるべからず、第三巻は京都及琶琵湖沿岸なりといふ、吾人はその速かに出版せられんことを望み、同時に此企てのたゞに日本全國のみならず、東洋否、全世界の寫生紀行を完成せられんことを冀ふ。