近事


『みづゑ』第四十八
明治42年3月3日

△石川欽一郎氏は臺北に在て公務の餘暇有志の爲め水彩畫の講習をなし來りしが、去月三十日及三十一日其成績品展覽會を臺北學院に於て開催せられたり。出品者は石川欽一郎、中村常吉、小熊寅之助、渡邊竹次郎、★園世師、加藤常太郎、湯淺直松、松崎靜祐の諸氏にして、其數五十七點を衆庶の觀覽に供し、兩日共多數の參觀人ありて極めて盛會なりしと。因に、寫眞中央立札に手をかけて起てるは石川氏なり。
△日本水彩畫會研究所一月例會は二十四日開會午前は大下講師の『洋畫の流派』と題する講話あり。午後より成續品二百餘點に對する河合、永地、大下、藤島、磯部諸氏の批評あり、水彩畫のうち授賞者は水野以文、八木定祐、相田寅彦の三氏にして、デツサンの授賞者は石膏岡田武松人體水野以文兩氏なり。夫より茶話會を開き、月次會を終り次に新年會に移り、種々の餘興ありて午後九時過散會したり、當日の出席者約六十名なりし。
△乙部笑波氏等主唱となりて大阪葉月洋畫會なるものこの程設立せられたりと。
△群馬縣前橋中學校にては二月十一日紀元節な卜して繪畫展覽會を開かれしが、出品の重なるものは日本水彩畫會研究所學生及眞野大下爾氏の作なりき。

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