問に答ふ
『みづゑ』第四十八
明治42年3月3日
■一冬期一度塗りたる繪具乾がす時間を空しく費して困る救濟の方法ありや二 嚴寒の際畫面が凍りて筆が自由にならぬことあり何とか方法なきか三 自分は眞面目に寫生をするとなると同一場處へ三四日も通はぬば仕上らず遠方旅行など出來ぬやうに思ふ研究の方法が違つてゐるのではなきか(銀園生)◎一 畫面にあまりダブダブ繪具を塗らぬやうにすれは日中なら冬でも寫生に差支ふる程ではなし但この繪具の乾かぬ事は雨天夕暮など大に困難するので何とかよき方法をと考察中なり良經驗ある人は報告を望む、ある人に西洋蝋燭か携えてその火によつて乾かせりといへり畫を貼る枠を工風し懷爐でも入れたらよからんか二 筆洗の水の中ヘァルコールを入るゝ時は幾分か凍ることを防ぎ得べし三稽古繪としては一枚の繪に幾日かゝるも差閊なし併し其場の感じを寫し取るには三十分一時間にても一枚の繪は出來るものにて同一場處を數時間續けて寫生してもあまり効なし稽古繪を澤山畫きて自然の形や色を翫味しスケツチの時に手早く寫す樣にしたら宜しからん■帝國文學と音學界の定價及發行所を知りたし(藤久みつ)◎前者は一册十五錢東京銀座一丁目大日本圖書株式會社、後者は一册十五錢東京神田三崎町三丁目音樂社發行■靜物寫生の話は何回位ひにて完結すべきや(織田生)◎凡そ十五回位ひ■一 太平洋畫會及白馬會の所在二 『みづゑ』『方寸』以外の美術雜誌の有無(山形、俊郎)◎一 前者に下谷區谷中眞島町、後者は赤坂溜池二白馬會發行『光風』あり年二回一册五十錢位ひ、他の美術雜誌は本誌後付の初めを見よ■一 木炭畫に好臨本なきや二 洋畫大家の好傳記書なきや三 ワツトマンの風を引きたや否を見る法(兵庫MK生)◎一 日本出版のものにはなし泰西名家のデツサンを集めたるものはよけれど得られざるべし二 日本洋畫家のなら美術家小傳のほかになし、西洋のなら澤山あり丸善書店に問合にされよ三 水を引いて透かして見れば直くわかる■藝用人體解剖の書ありや(増田)◎久来氏著『藝用解剖學』あり本郷區湯島切通坂町畫報社發賣定價未詳■一 カツサンの鉛筆畫臨本ほ全部何册なりや代價は何程にや二 三色版か何かの畫集なきや(銀園生)◎一 六十一册と覺ゆ、丸善にて二十圓二 一時多く出版されしも近來は其影を止めず■日本水彩畫會研究所にば何時でも入學差支なきや(○○生)◎差閊なし