紹介


『みづゑ』第五十
明治42年5月3日

◎東京寫眞研究會第一回品評會畫集、第一輯 人物風景を合せて藏むる處の寫眞畫十五面、澁きラシヤ紙の臺紙に美しく貼られてあつて、畫題や撮影者の名は白く印刷せられてある、頗る贅澤なもの。人物としては渡部氏の「あみもの」山崎氏の「兒童」などよく、山本氏の肯像は芝居がゝりて嫌味あり、宮内氏の畫生も畫をかく態度と見えぬ。風景では加藤氏の浮草面白く、淺野氏の「河畔の秋」、秋といふ感じは充分見えないが佳作、久野氏の牧場は極めて自然で氣に入つた。品評會中の傑作を集めたものだけあつて、流石に垢抜のした寫眞が多く、畫をかく吾々も大に教へられた處があつた。第二集第三集の續刊を待つ。(定價六十錢、日本橋本町小西本店發行)
  ◎中央公論 春期大附録號 本文中「犬養木堂論」は出色、黒頭巾氏の『帝都の新聞經營者』面白し。附録の小説脚本二百頁、曰く徳田秋聲の『母』、曰く眞山青果の『枝』、曰く佐藤紅緑の『癈馬』、曰く正宗白鳥の『惡緑』、それそれ特色があつて異つた印象が與へられる。政治に文學に、いつも新題材を提供せらるゝ編者の勞を多しとする。(本號限り四十五錢、本郷駒込西片町反雀社)
◎印刷同志(創刊五週年紀念號) 印刷界唯一の雜誌にして本號には四葉の寫眞版を挿み印刷に關する諸家の説を集めたり(毎月一回定價五錢、本號限り十五錢、京都府葛野郡大内村字八條坊門印刷同志會發行)
  ◎實業界甲府市より新に産れたる實業雜誌にて體裁内容殆と實業の世界に似たり(毎月一回、定價十錢、甲府市紅梅町山梨實業社發行)
  ◎遊覽案内一册 青梅鐵道がカチヤカチヤ式の輕便鐵道が普通鐵道に改築した紀念として發行されしもの、筒井年峰氏の實景寫眞十三葉、並びに汀鴎、九華、思案、天渓、小波、四丁等諸氏の美文紀行文を藏めたり、粧釘瀟洒、その地に遊ふ人の好伴侶たるべし(非賣品)

この記事をPDFで見る