問に答ふ
『みづゑ』第五十
明治42年5月3日
■水彩畫に手本によりて稽古するのと實物にょり稽古するのと何れが宜しきや、若し手本がよいとすると和製舶來何れなりや(大阪初學生)◎『みづゑ』四十八號大下氏の『模寫について』といへる講話を是非再讀せられよ、最も極めて初學の人にて寫生不可能なら手本にてもよろしきが、舶來品にても必ず可なりといへず、色彩や感じの我國と異なるものあり、また印刷のために其色の強烈なるもあり、和製にても一時佳良の臨本出でしも今は市中に拾と跡方もなし、『みづゑ』の口繪原色版の分は、印刷も良好にてやゝ原畫の趣ありかゝるものち參考とせらるれば可ならん■譲品交換譲與の御取扱は水彩畫に關係あるものに限るや、又物品を托せし人め賣價も『みづゑ』誌代に組込まるゝにや(銀園生)◎範圍は極々狹義に解されたし、次に賣價は賣主へ送付すべし、たゞ物品賣約後の送金に對して返戻の手數を省かんため誌代繰入となせしなり■普通讀者にして肉筆臨本借用を許可さるゝ事を得るや(自然兒)◎會友若くは特別讀者に限り候■京都にて水彩畫を學ばんと欲すよき教師を示されたし(熱望生)◎岡崎町に關西美術院ありいつにても入學を許さるべし、個人としては高等工藝學校に鹿子木、都鳥諸氏あり、直接問合されよ■小生は高等小學たけの教育よりなし、夫にても洋畫家となり得べきや、また外國語は何が一番必要なりや(野口生)◎天才だにあり修養さへ怠らねば、無教育者にても立派な畫家となり得べし、併し教育低き人は自然に理解力鈍く修業中進歩速ならざるべし、外國語は美術の中心たるフランス語も可なれど、大概の書物は英語に譯して出版されてあれば却て英語の方便利ならん■B番『みづゑ』第六は交換でなく譲與は叶ふまじきや(佐藤周子)◎交換が希望との事■ラスキン近世畫家の譯書ありや、また原書の代價及發賣所を知りたし(九州H生)◎斷片的のものは雜書等にて見し事あれど全譯あることを聞かず、また原書は其装釘の樣式によりて代價一樣ならず、丸善書店に問合されよ■一 中學卒業をなさずして美術學校入學試驗に應ずることを得るや二繪葉書圖案の描法を述べし書物なきや(下總翠山生)◎一 絶對に許されす二ー知らず■一 東京美術學校々友曾月報は賣品なりや二 三宅克己氏著『墨繪講話』の定價及發賣所三 東京美術學校洋畫科入學試驗の資格(京都櫻涯生)◎一 非賣品にして會員に同校出身者又は關係者に限る二 東京神田中西屋發行定價五十錢かと思ふ三 中學卒業者にして入學の際實技試驗に合格せしもの、實技試驗は少なくも同校に關係深き白馬會研究所に於て一ヶ年位ひデツサンの稽古をせし上ならでは及第覺束なし、但、稀には素養なき者にて偶然入學せしものもあり又入學は單に實技のみならず、中學校卒業當時の成績を參酌する由につき平素の勉強も大に關係ありと知るべし、因に本年の結果は希望者百余人に對し二十九人の假入學を許せりといふ■春鳥會の水彩風景畫帖第一集はまだありや(汀葉)◎賣捌店より回収せしもの少々あり