うはさ


『みづゑ』第五十二 P.9
明治42年7月3日

 こゝは太平洋畫會展覽會々場の、第一第二第三室である、繪を見る人がどんな事を言ふてゐるだらう。
■夏目君の『お稽古』の前で○此お母さんにビロードの着物を着てゐるね、イヤニハイカラな姨アだ△見晴しがイヽナ、こんな處に住みたい、家賃はイクラ位ひだらう■望月君の『戸山の原』○草箒の行列か■瀧澤君の繪○ワルク吉田君を眞似たものだ△この青白い無氣味な色をヒユードロドロ的といふ■平木君の『松島』の前○ホントに此通りよ、今年は往つて見たまへ■藤島君の『おせんころがし』○誰れか知つてゐるかい、このイワレを何でも此突出てゐる崕から、阿仙といふ女が海へ轉がりこんだのだらう君の處の妹さんにタシカお仙さんと云つたね、そんな處へやりたまふな■竹内嬢の『馬具』の前で、老人と子供○ソラ博物館で見たらう、コレは昔しの鞍と鐙で、殿樣がお馬に召すのには皆これであつた■荻生田君の『庭の隅』○丁度西洋草花の種子の入つてゐる袋のやうなものですね△ソーさ、先生は西ヶ原の農事試驗場のお役人だもの■河合君の『藪』の前で○さぞ蚊の澤山居ることだらう。

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