讀者の領分


『みづゑ』第五十二
明治42年7月3日

■前々號の『畫室』は面白く讀んだ、先生に咫尺してゐるやうで嬉しかつた。また前號の『風景畫の二別』『自然の約束』も面白かつた『圖按法概要』はどしどし續けてもらひたし、大下先生の『春鳥畫談』は感銘したこういふ樣な訓話をいろいろ掲載して吾々初學者の頭に吹き込んで貰ひたい(京橋KT生■小島先生の『ラスキンの山岳論』は後があるやうですがお早く願ひます毎號々々失望してゐるのは僕一人ではありますまい(靜岡靜陵生)■一 畫架及び佛國製十六色入水彩繪具安價に譲る箱に損所なく繪具は半分位ひ使用せしもの五個他は一杯あり二 八ッ切大水彩畫を送るから美術雜誌と交換して下さる力はなきや(松本市宮淵忠地英雄)■鎌倉の講習には是非出席しますが四國邊から往くに便利な處で一度は開いて下さい(伊豫妻鳥生■九ッ切スケツチ箱譲りたし御望の方は御照會を乞ふ(東京深川區門前町十八伊坂淺吉)■小生は會友となつたから宜しく御交際を願ふ又水彩畫の御交換も願ふ、田舎に居るものにはお互に研究の助になりませう(東海道興津町遠藤方若林生)■口繪に靜物畫を時々出されたし(茨城好畫人)■『みづゑ』第五、五十錢にて譲り受たし(石狩國夕張郡角田村福井善吉)■繪葉會競技會の開催を乞ふ(牡丹)■鎌倉とは大失望二年も關西で開かれたのだから無理の願かに知らねど今一度催して貰ひたし(和歌の浦生)■鎌倉へは喜んで出席しますが何卒先生と一しよに寝起して研究することの出來るやうにおたのみ申ます(中山巍)■鎌倉師範校内にも圖畫研究會があります會員は四十人以上居ますから講習會には大に盡力して出席致させます(鎌倉SK生)■一 畫架の中古送料共壹圓七十錢着金次第送る二 不相變肉筆繪葉書交換を乞ふ(鎌倉長谷町堀谷紫海生)■肉筆水彩畫交換を乞ふ未熟ながら必ず返信す(東京牛込區鶴巻町二二八長島方星野永一)■僕の知つてゐる東京附近の好寫生地を案内しやう、まづ近處では植物園内、近來は毎日寫生に集まる人が澤山あるので氣の弱い連中には一寸來られない、次は高田の栗林、それから小日向の久世山、音羽の護國寺もよい、雜司ケ谷鬼子母神の槻並木は誰れでも一度は畫いたらう、西から南へ徃つて戸山の原は好寫生地だ、少し遠いが新井の藥師も繪になる、青梅街道甲州街道など新宿から中野方面の道路山水は面白い、十二社は俗地になつて今はダメ、モツト遠くゆくなら井の頭辨天の池はよい、それよりも石神井の池の方が靜かで面白い塲所が多い、花のない時分の小金井も捨てたものでない、府中から多摩川を越して百草園も眺望がよい、武藏野を見るなら狹山の丘もよい、戻つて來て千駄ヶ谷代々木の邊は人家が殖えたがマダスケツチに適する處も少しはある、他の方面は追々に御案内致さう(東京寫生通)■廣く肉筆繪葉書の交換を乞ふ(岩手師範、菅原藤花)

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