畔川 『みづゑ』第五十五 明治42年10月3日
袖が浦にて畔川 我立てり荒らき磯邊に我立てり流人の如き胸の思ひや 風強き日の夕暮の海に立つ二人が前に墨雲下り來 さはがしき君が心は君が瞳は我が砂に書く文字も得よまじ 生垣の鄙の海邊の我が宿に姿ゆゝしき戀人は來め かくて世に我等二人がほろぶべき眞珠の海の荒るゝ波かな