問に答ふ
『みづゑ』第五十五
明治42年10月3日
■美術新報及美術學校々友會月報發行所其他を知りたし(柏木生)◎前者は毎月三回一部五銭東京本郷湯島切通坂上畫報社發行、後者は美術學校出身の會員のほか配布せず●『みづゑ』缺號は何日頃再版すべきや(C、H生)◎再版は不可能■大下先生筆『社頭』の肉筆を見たり、右石段の蔭の色及びコマイヌの台の色の順序を知りたし(シゲル)◎舊作にして且手許に繪がなき故御答致しがたし、但、蔭の色の如春は他の印象を強くするため種々なる暗き透明色を重ね用ひし事と覺ゆ(大下生)■一畫架用枠押へ金具の使用法二油繪を水彩書に改め摸寫すると色が汚れるに困る、濃い處は重ねて畫くものにや三神戸にて水彩畫の良教師を知りたし(津川清平)◎一文房堂の目録に圖がある通り畫架の脚を通して枠押への金具の爪をカンパスに掛けネジを締るなり二水彩の摸篤と異なス事なけれど、油総は重く且色調強ければ、其場合に應じ、重ねてもよし一度に強き色を塗るも可なり三如何なる畫家が居るか知らねど艮教師は得難からん■一私は普通間接讀者であるが寫生畫の批評を願はるべきや二大下先生は夜分は何日も御在宅にや三完
全なる遠近法の獨習法を知りたし四繪が寒いとは如何なる理由なりや五水彩スケツチに紙の大なると小なると何れがよきや六雑木林を寫すに葉を先にするにや幹を先にするにや七洋畫研究者に利益ある美術書數種を知りたし(日本橋和輝生)◎一毎土曜日午後一時より三時迄春鳥會へ、又は第四日曜日正午より一時迄日本水彩畫會へ御持參になれば批評して差上べし、郵便にて送ることは御断り申す、若し持參叶はぬなら會員となられよ二未定三完全且獨習に好適の書はなし、參考書としては日本橋本町金港堂發行非汲氏の用器畫法第三がよからん解説北ハ三十八銭なり四自然の色彩は多量に熱色を含むものなり、それを寒色を多くして畫くと繪が寒くなるなり、又自然の色彩は樋めて複維豊富なるものなり、それを單調に畫くと色が貧しくなる、これも寒いといふなり五初學の人にはワツトマン十六切以上九ッ切位ひが適當ならん、技術が進んだら四ッ切半切など試みて可なり六何れにても可なり、其時の便宜に従ふをよしとす、但し繪は一部分宛仕上るものでなべ紹えず全體に着色してゆくこと必要なり七最新水彩畫法六十五銭博文館、畫道一班六十五銭博文館、藝苑雑稿、九十銭、湯島切通坂上畫報社、其他數種、序に君の質問は他に十一項あり、右は水彩畫に直接關係なきもの多く、紙面を塞ぐことを得ず、第一に答へし時間内に來つて、直接問合はされたし■一文部省展覧會は何日ですか誰でも観にゆけますか二油繪畫法は何といふ書ありや三繪書獨習書の發行所四方寸の發行所(相澤兵治)◎一★月十五日より十一月二十四日迄開會、誰でも參観し得二適當の書あるを知らず、絵畫獨習書には多少説明あり三帥田區駿河臺國民書院發行定價壹圓四本郷干駄木林町方寸社一部十五銭