水貼用縁紙製法

北村生
『みづゑ』第五十九
明治43年2月3日

□畫紙を水貼する際、一々糊で縁紙を張るのは甚厄介である、文房堂發賣のアラビラゴムを塗つた縁紙は非常に便利であるが高價である。左に之を手製する便法ををすゝめする。
□紙は模造紙もよいが、薄手のインキ止め又はロールと稱する紙が最よい様に思ふ。
□彩科舖又は藥種屋でアラビヤゴムの塊を求める。成るべく半透明のまじりけのないものがよい。三銭も出せば澤山ある、アラビヤ二分に水八分位を加へて一二日置くと、塊はドロドロにとけてしまふ、此液を大形の刷毛で紙に塗るのである。
□液の濃さは形容し兼ねるが、乾いてから郵便切手の裏に塗つてあるのと同様に光澤があればよい、一度塗つて乾いてから光澤がなくば今一度塗ればよい。
□紙が乾いてから之を適當の幅に切つて用ゐる。用ひ方は郵券と同様一寸水でぬらせばよい、但し水が多すぎると縁を張つて乾くまでにはなれてしまう恐がある。殊に模造紙は一層はなれ易い傾がある。此方法は一度経験すると甚輕便で経濟的な事が分るであらう。(神戸北村生投)

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