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大下藤次郎オオシタトウジロウ(1870-1911) 作者一覧へ
大下藤次郎
『みづゑ』第六十
明治43年3月3日
『みづゑ』も此七月で滿五ヶ年になります。發行以來讀者諸君の厚き御同情によつて、無事に今日迄繼讀して來ました。殊に、一昨年以來特別讀者の制を設けてよりは、多數の賛助者の力によつて、雜誌は幾分の面目を改め、其結果愛讀者も増加して、前途いよいよ有望に思はれます。元來、『みづゑ』は正月だからといふて平生より立派な雜誌を造るといふこともなく、いつもいつも漸進主義で今日迄やつて來ましたが、此七月の五週年には、平素よりは少し異つた雜誌を出したいと思ひます、それには資金が入用なのですが、不相變其方に充分の用意がありません、そこで、私の持合せの畫を賣つて、幾分の足しにやうと考ひました。七月に少しは立派な雜誌を見たいと思はるゝ諸君は左の規定によつて御申込を願ひます。
一 配布すべき繪はスタデー及スケツチで、スタデーには、ある製作のために部分研究をしたものがあり、スケツチには瞬時の現象を捉 へたものがあり、何れも繪としては滿足のものではないかも知れませんが、極初學の方には却つて御參考にならうと思はれます
一 價は一枚金五圓以上で、繪の大きさに九つ切以上八つ切六つ切位ひまで、何れも相當のマツトをつけます、この價のうちには、荷造及 送料も含んでゐます
一 御入思の方は、スケツチなりスタデーなり御好みを言つて下さい、出來る丈け御望に叶ふやうにしませう
一 申込規限は別に定めません、併し七月號は五月中に用意しなくてほなりませんから、なるべく早い方いがよろしい、すでに出來てゐ る繪ですから、御送金後直ちに送ります、但し、旅行等で不在の時は遲れます、毎月二十日頃なら都合がよろしい 以上
一 御申込は春鳥會宛、御送金は振替貯金が安全であります
明治四十三年一月
大下藤次郎