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『みづゑ』第六十一
明治43年4月3日

□本號口繪『台北近郊』は小形ワットマンの四ツ切に御座候
 次號原色版は、大下氏の『大宮淺間社の森』主並に外國名家の作一點を出すべく、石版畫は未定に御座候
□前號は例月よりも發行相遅れ候爲め、愛讃者諸君より頻々の御催促を蒙り恐縮致し候。中には一日發行と誤解し居られ候方も有之候が、製本出來獲送の手績を終りしは實に三日夜十暗にして、决して定期の日取より延引せしに無之候間、あしからず御諒察願上候。
□二月はいつもより日數少なきことも萬々承知、從つて原稿〆切も早め、校正も疾に終り居るも、原色版印刷遅れ、漸く二十八日に到り出來せしも、製本部べ廻して數の不足を發見し、更に數枚を刷立候爲め、かく例月よりは遅刊に相成申侯
□『みづゑ』の原色版は、製版所田中に於ても珠に盡力致居候も、如何にせん、かゝる美術的製版に熟達せし技師は僅かに一人より無之、其上、七月紀念號のため製版の數相増し居、旁々手廻り兼し結果、に御座候。且他の註文と異なり、本誌の分は、第一次の製版にて不結果の時は第二、第三と、全然最初より版を更めて精巧を期し居候、從つて原畫は早くより送り置候に拘はらず、長時日を要する次第に御座候
□原色版に於て『みづゑ』の口繪よりも精巧のものは、現今の處他にあるまじとは田中製版所の宣言にして、また編者の誇とする處に御座候
□さるにても、月の一日より七日頃迄、數十通の督促或は問合状(中には往復はがきにて、又は後より到着の旨御通知ありしもあり)を手にせる編者は、諸君の本誌に對する熱愛の情の淺からざるを、今更ながら嬉しく感謝致候
□定期刊行物の発行者が、故なく其期日を遅らせるは、天なる罪悪なりとは、常に編者の感ずる處に御座候。そは地方に在る人ならでは、充分解されまじきが、來るべき時に來らざるため、途中紛失が、發送の誤りか、送金の未着かと、種々なる疑惑を生じ可申、又都會在住の人にても、幾度も雑誌屋店頭に通ひ、失望して歸るの不快を抱かしむべく候。それ故、本誌は期日より數日前に發行致し得るやう、常に手配を怠らざれど、如何にせん無責任なる印刷業者ありて、往々發行日間際に至らざれば註文の品に着手せざること有之候爲焦慮少なからず、既に石版の如きは、昨年末より其印刷所を變へ漸く安心致候次第に御座候
□本誌は、過去五年間、嘗て一日たりとも其期日より遅れて發行せしこと無之候。今後と雖も、不慮の出來事は別として、决して遅刊等無之候間、左様御承知置下され度候
□會友諸君よりの通信、叉は批評畫等の郵便物に、日本水彩畫會宛に相成居候もの有之候が、右は春鳥會宛に願上候
□振替貯金にて御送金のせつは「彿込金額のほかに登記料金貮銭を必ず御添下され度候
□宿所番地宛名等、文字不明の爲め一度發送せし雑誌書状等返り來りし例あり、爾後必ず明瞭に認められ度候
□御送金の目的を明記せられざるため、往々二重に雑誌を發送する事有之候間、註文には必ず何月分或は何號よりと明記され度、明記なきため同一の雑誌を再び送りし時は、タトへ御返却あるも誌代は申受くべく候
□總て御投稿御註文の時は、一應會告叉は註文規定等御一覽有之度候
□七月紀念號のため御頒ち可致繪畫の數ははすでに豫定に達し申候。これにて充分なれど、紀念號をして更により美しく致度存候まゝ、大下氏より猶十數様の繪畫を提供致され候間、御希望の方は速に御申出有之度候

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