讀者の領分
『みづゑ』第六十一
明治43年4月3日
■寫生をやつてゐるので見てゐると、一人二人と集まつて見物人は黒山になつた、處が先生何と思つたか、十二號の筆を出し繪具ダラケのパレットを掻き混ぜ、ウルサイ!どいふより早く大手にそれを振廻した、着物でも汚されてはと見物人は大恐慌我れ勝ちに逃出したが、先生大切の畫面には大小の班點ポチポチとはお氣の毒千萬(畫かき覗き)■現代欧米諸國の大家の姓名を誌上に紹介されまじきや(一讀者)◎サロンの受賞者やローヤルアカデーミの會員は何れも大家といふを得べく、頗る多數にて御紹介致しがたし、畫家人名辭書でも御覽になつた方がよい■公設展覽會に水彩畫で二等賞を取つたものがない、僕は一商店の小僧だが、日本の畫界を將來は水彩畫で一變せしめ、やうと希望するものなり、本年は諸先生の一層の奮發を望む(山本嘉一郎)◎第二遮展覽會に二等賞のうち吉田博氏の水彩畫一點あり■原書の美術書を半解な語學の力でよむよりも、氣永く『みづゑ』の講話欄で紹介されるのを待つたらドーだ、字書と首引する暇に宜しく寫生すべし。序に誌上に追々掲載せられんことを編者に御願ひ申す(兵庫MY生)■僕は今度東京芝源助町二、小松熊吉様方へ移轉しました、不相變御交際を願ひます(塚崎繁夫)■『みづゑ』三月號の「研究上の良信」及び「初學者逓有の缺點」、共に黨派などゝいふことの少しも見えず平氣に記されたのはさすがにとうなづかれました、繪の中では「雪の川口村」は位置が一番好きですが左下方の水がどうにかならなかつたでせうか、「海岸」の松の色は目新しくて、農家の屋根の色も共に油繪の様な色が氣に入りましたが、是れに比べて他の色が弱過ぎるやうに思はれますがどうでせうか、然し一二號の口繪と比べて、餘程活々しくて氣持ちの良い繪でした○何時か紙上で、我國の水彩畫派に付き述べられたし○岩見飯田君發起の廻覧畫帖の件賛成、一日も早く實行せられたし○審美書院發行の「第二回公設展覽會圖録洋畫の部」譲り受けたし(神戸布引久形橋東詰津川清平■『みづゑ』五十九を見る、口繪の三色版其他皆まづい、問答讀者の領分此共にくだらぬ、一寸考へれは分るやうな質問が澤山なのに驚き、又一々これに答を與へられる編者の忍耐に感ずる○額縁及マツトの繪の調和につき講話を載せられたし、展覽會を見てその無茶苦茶なのに驚くからである(三平山人)■石見飯田君發起の廻覽貼賛成○『ボスター臨畫帖』四十三册新しきものあり交換希望、『女性と趣味』、吉田氏『寫生旅行』(上製)、『日本名勝寫生紀行』、畫架スケツチ籍、乞御照會若くは安價に譲る、肉筆交換を望む、其他美術に關する雑誌古くともよろしく候(三重縣椋本局區内駒田彦太郎)◎文意不明■新に購入せし二號畫架(元價三圓二十銭)不用につき安價に譲る乞御照會(下野日光星野長一)
■諸君のうち、又は友人にして、學資の幾分を得んため自己の作品を廉價てもよいから賣りたいと思ふ士は、二三の商庸へお世話して上げてもよい、但し吃度賣れるか否やはお請合は出來ぬ、苦學の方のためにもとお相談申上る(小樽區イナホ町畑五六山内生)■三宅氏『彩畫帖』第一輯(損所なし袋なし六枚組)、織田東禹氏『彩畫臨本』(六枚揃損所なし)不用につき譲る乞御照會(廣島縣比婆郡本村上谷元山秋甫)、◎油繪スケツチ箱、繪具三十色、パレツト、二ツケル油壺三個、筆六本、パレツトナイフ、未使用リンシードオイル、テレピン油、各一個、スケツチ板二枚を大安價送料共四圓に、三脚一個送料共四十銭に、ミレースケッチ箱送料共六十銭に譲りたし○傑作肉筆繪葉書の交換を求む(相州鎌倉長谷堀谷一郎)
■『みづゑ』五十三より五十九迄一册十五銭にて譲る○參號畫架安價に譲り受けたし)長野縣下高井郡往郷村三五四、山田直一郎)■『みづゑ』六十號入用(春鳥會)三月の『みづゑ』で私が一番嬉しく讀んだのは「初學通有の缺點」です、假令他人の畫れたのでもあれ程親切に教へて頂くと目が醒める様に感じます、况して自分の描いたのに於てをやです、?に深く先生の御親切を謝すると同時に、今後も時折誌上にて詳しく教へて下さる様に御願致します、尤もあれ程澤山な事は要りません、せめて三頁位宛毎月御願致します
○會友徳永正君の發起にて『つヽじ畫集』といふ回覧畫帖が發行されて居ります、一一月發行の第三輯は「ビール瓶とコツプ」いふ題でしたが出品者十名許りの内に非常に面白いのがありました、赤い瓶もあれば藍い瓶もある宙に飛んだのもあれば叛を轉がつてるのもある、構圖色彩共にそれはそれは面白いもの許りです、そして各自の露骨なる評が振つたものです「高い山から谷底見れば瓶やコツプが轉び合ふ」なんといふ奇抜なのがあります、三月の題は「書物とインキ壺」だそーです、御希望の方は發起者に申込み下さい、之れは面自い事ですが、各地方の出品を一まとめにして廻せば大變暇どるものですが、各地方で可成多く集めて一冊となし、他の地方の分と交換して見る様にしたら都合よく行くでせう○地方で發行する畫集御存知の方に本欄で知らして下さい(山口猛)■不自由な田舎の同好者と云つたのが御氣に召さなかつたのか又は自重されたのか御賛成の方が大いに少數だ三河の石川君福島の遠藤君愛知の柴田君紳戸の久住君(君へのハガキ返れり)御厚情有難う。安房の白井氏如何致しましようか(柴朗)