南部アメリカの秋

中川八郎ナカガワハチロウ(1877-1922) 作者一覧へ

中川八郎
『みづゑ』第六十四
明治43年7月3日

 二度目の外遊でアメリカに居た時、インデヤナポリスで日T.C.Esteele といふ風景書家に逢つた。この人は米國中部畫家團體のプレシデントで、名望ある極めて親切な人で、インデヤナポリスから汽車で三四時間のプロークーイルといふ處にサンマースッヂオを持つてゐる。私は野山の美しい秋の頃、そこで數週間スチール氏と共に近處の寫生をして暮したが、此邊はアメリカでも景色の至極よい處であつたから、愉快に勉強が出來た。是迄は色紙に水彩を試みたことはなかつたが、此時水彩繪具で油繪のやうな感じを出して見やうと思つて、初めてホワイトを混ぜてグワッシ風のもの(口繪はその時の寫生)をやつて見た、純粹の水繪とは調子が變つて物にょつては中々面白い結果が得られるやうに思ふ。

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