名家談片2
『みづゑ』第六十四
明治43年7月3日
太平洋畫會に出たマルタンの繪を見て、印象派の末流をくむ人達は少しは考へるがいゝ、印象派とさへ云へば、赤や黄や紫の繪具をデゴデコに塗つて、ドツチが上だか下だか分らぬものを畫いて、獨りで喜こんでゐるが、君達の御先祖はソソな馬鹿なことはしてゐないよ、まアあのデツサンの確かなことを見たまへ、そしてベタヽヽに塗りっけてあるあの繪具には、それぞれに意味がある、一筆ごとに考へ々々してやつたのに違ひない、額像の隅から隅迄、何處を見たつてチッとも、ゴマカシがない。 ○
古典派、傳奇派、寫實派、自然派、印象派、何でも構はぬ。よいものはいつ見てもよい。