圖按法概要[十三]

比奈地畔川ヒナチハンセン 作者一覧へ

比奈地畔川
『みづゑ』第六十六
明治43年9月3日

 一、単獨模樣
 或る目的の爲めに作られたる獨立したる模樣である、則ち同形状にせよ不同形状にせよ模樣の連續することなくして作られたる一個の模樣である。
 單獨模樣の形式を分類するには先づ外廓の形状を以て二種に大別する。則ち
 〔一〕正形式のもの
 〔二〕不正形式のもの
 是を更らに細別して、
 〔一〕正形式(圓形、橢圓形、半圓、五角形、六角形、長方形、菱形、及び各種の三角形等)
 〔二〕不正形式(外形の一定せざるもの)
 とする。
 上記の正形式に屬するものゝ内部の(箝入する處の)模樣を、更らに四種に分つ。
 波及状散光状巴文状對照状
 である、(挿圖に就て看るべし)
 今茲に一個の單獨模樣を得んとする塲合に、例之へば正形式の中如何なる式によつて模樣を得んかを初め先づ定め(四個形式の中一個を撰定し)、是に應用すべき一花なり一草なりを以てし、第一番に其骨組を考按する、其骨組を得たらば、大凡其一花なり一草なりの、自然物の形状と骨組とを引合せ、骨組の線は自然物に、自然物の形式は骨組の線に、漸次其接近を計り、遂に圖按化せしむるのである。今單に一花一草を得ても直ちに紙上に一圖按を得んことは、最も困難である。
 挿圖に於ては、其一斑を示すに止まるを以て、其箝入すべき摸樣の骨組は、考按者に於て、任意に多種類の變化を考定し、其骨組に應じたる模樣を配置構成すべきである。
 最も此單獨模樣は、大なるものに應用すべき塲合は、此四個の形式の綜合配置せらるゝ塲合多きを以て、決して一形式に限られたるものと思ふてはならぬ。(禁轉載)

この記事をPDFで見る