寄書 紀念號に付いてのおかしみ

伊豆住人
『みづゑ』第六十六
明治43年9月3日

 僕のやうな物骨目とても水繪は握手を求めてくれる、事に紀念號と來ては早く握手を求めたかつた。いざ紀念號を見た時の心持つたら何んなであらうと豫期して居つた如くはたしてたまらなかつた、先づ握手ずるや否や書齋の柱できみだんご所かこぶだんごまでこしらへて明る日學校に行て大笑れした。
 次になほ滑稽があつた、或友人に紀念號を見せたら段々批評して行つた、そのとたん僕はすかしを失禮した、あつと思ふたが友は氣付きさうもない。それ迄はよかつたが、中川先生の(グワツシ)に來て「アハーこれがいはゆる油ゑかどうれで油くさい」と云つて原色版の臭をかひだ、僕はおかしさを包み兼ねて終に先刻油上(アブラアゲ)を食つた由を白状した、友人は苦笑し、て初めて合點したらしかつた。

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