寄書 『みづゑ』に希望

湯淺生
『みづゑ』第六十七
明治43年10月3日

 『みずゑ』の發展と内容の向上されたるを喜祝す。
  繪畫既に美術なり――水彩畫は繪畫なり――『みづゑ』は水彩畫同好者の絶大指南車なり――此見地よりしてプライスは多少ヱルヒヨーヘンされても僕は原色版、色彩石版のより多からんことを希望す。
 僕由來風景畫を殊に愛好し、近くは六拾六號大下先生の「しけ」藤嶋先生の「代官阪」前號の「夏の山村」前々號の石井先生の「鴨川」等最垂涎して喜悦喜悦。
  僕矢張六拾六號に『みづゑ』の親友君の御説の如く、大下先生の紅葉せし雜木林、極めて遠き遠山の繪具の遣ひ分け等、或は旅行中得られ給ひしスケッチ原色版を掲出ありて、其描き方の色彩の順序、乃至一種氣骨ある寫生には油繪筆の剛き筆毛が適當、及び其方法など御掲載多からんを賛成、否な御願ひして止まず。
 或時は山嶽號、或時に海岸號等の名稱の下に、先生の美敷風光の原色版多き年二回位ひ臨時増刊の御發行は如何尾瀬沼號の如くに。

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