寄書について編者から


『みづゑ』第六十七
明治43年10月3日

 以上は是非掲載せよとの御請求だから載せたやうなものゝ、何も名前を擧げたのではなし某氏の名譽を損したといふ譯でもない、些々たる事で誥らぬ場塞げてある。某氏は、會友としてか特別讀者となるか未定であつた、會友と特別讀者とは帳簿を異にしてゐるから、何れにか極めで貰ひたく指圖か請ふたのであつたらう。眞に我々の事業に同情のある方なら、何とか極めて返事をくれたらそれでよいので何も退會するには及ぶまいと思ふ、私共のやり方が下手であつたために、多年の會友を失ふたのは誠に遺憾に思ひます。序だから申上る雜誌の發送の時は、一々中の繪の落丁など無い様に調べさせるが、何分多數の事であるから、見落しもあらう。或讀者は、四枚も落丁のあるのに氣のつかぬとは不都合たといふやうな御叱りもあつたが、かゝる場合はいつでも御取換するから、あまり嚴しい御小言は御免を蒙る。營業にしてゐるのではないから、あまり六つかしい事を言はれたり讀んでやるのだといふやうな態度を見せられると全く厭になつてしまう。またある讀者は、雜誌が來ないといふて、友人の處へ來てゐるのに僕の方へよこさぬ、そんな不親切なやり方なら前金を返してくれと怒られた。これも確に發送したのであるが、一ケ月に五六册に途中紛失があるから、敢てこちらの不注意とのみ思はれては困る。
 次に前金切の後に發送を止めるは、多年の讀者に酷のやうでもあり、また讀者を失ふ基で損だといふ話だが、何も雑誌の二冊や三册を惜むのではない、是迄も可なり澤山無代進上になったものもある、併し、押賣のやうに思はるゝのも厭だし、それに雜誌を出した後に送金があると、一人で事務をやつてゐるのではないから、往々二重に發送して、双方に手數をかける事になる、夫故、斷然帳簿に記入なき分は送らぬ様に極めてあるのです。厭になりたらいう廢刊するかしれない雜誌ではあるが、まだまだ二三年は大丈夫ゆへ、何卒前金切にならぬうち跡の分を送つて頂きたい。
 特別讀者の制は、本誌發展のためであって、これに應ぜらるゝ方は、一ヶ年内に一枚の繪がほしいといふ以外に、本誌に同情があつての事であらう、夫故其繪畫については、あまり面倒な御注交や撰擇は見合せて、可相成會の方へ任して戴きたい、これは今後の應募者に★に御願して置きます。(編者)

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