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『みづゑ』第六十七
明治43年10月3日

■ ■ ■□原色版『午後四時』はワットマン二ッ切にて場處は小石川水彩畫會研究所の前通り、時は昨年今頃にして數日を費して寫生せしものにて本年太卒洋畫會に出品されしものに御座候
 □『波止場』は大さ未詳、氏の畫風は先つ線を以て畫き色を平らに埋めてゆく描法にして、遠近深味などいふ點に充分の好果を収め難けれど、印象判明一種の画白味あり、氏は好んで波止揚の寫生を致され候
 □『庭の一隅』は一尺に一尺五寸大にしで場處は筆者の邸内、二時間程づゞ二日に渉りて寫生されしものに候
 □次號にはシモンヅ氏の筆になわるワツツ論を掲載可致候、譯者は矢代幸雄氏に御座候
 □大下氏の秋の(白峯山麓)の紀行は、原色版四枚及木版畫數葉挿入し、十一月中旬本誌臨時増刊として發行致すべく候、詳細は次號に廣告可致候
 □横濱支部内有志の發起にて、本月十六 十七兩日、野毛老松學校に於て水彩畫展覽會を開かるべく候、出品は東京幹部諸員並ひに研究生、及び横濱支部會員の製作にして、特に鑑別を經たるものを陳列すべく、出品數は百枚以上に可相成候、切に同地方有志の御來觀を希望致候
  □『みづゑ』十一月號は、文部省美術展覽會の詳細なる書評も登載したく、從つで數日間發行遅延可致候間豫め御斷り申置候
 □『みづゑ』は明年七月頃『水の研究』と題する特別倍號を發行すべく計畫中に御座候、各專門家の筆になれる原色版七八葉、木版石版等多数を挿入すべく、軒周年紀念號と同様のものを作りたき考に御座候、就ては、讀者諸君のうち『水』に關し特に御所感のある方は、文の長短を問はず御投稿下され度候
  □本號は講習會の記事多かりし爲め、寄稿の大部分は次號へ相廻し候
  □次號の原色版は石川欽時二郎氏の『臺灣海岸』大下氏の『秋の鰍澤』並びに磯部忠一氏の作を出すべく候

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