紹介


『みづゑ』第六十七
明治43年10月3日

  ◎遠野物語 柳田國男著
  本郷區龍岡町 聚精堂
  菊判一一四頁定價五十銭
  陸中遠野の郷に今現に在る出來事の物語 にして、山神、山男、山女、雪女、河童 猿、狼、狐、熊などの怪異談百余項を、 修飾なき筆にて誌される珍本なり。成功 と云ひ、實利と云ひ、科學と云ひ隔爽明 といふ、壓迫刺戟のあまりに多きに苦し む際、かゝる書を手にすることは何人に も必要なり。但、著者は此書の現代的に 在らずとの謙遜より、發行の部數僅に三 百五十を限られたるは惜むべし。
  ◎新日本畫譜 上巻 石井拍亭畫
  本郷駒込千駄木林町 方寸社
  四七長方形洋装 定債七十銭
 石井氏の日本畫に、油繪よりも水彩より も面白き處あり、此書集むる處の繪畫七 十枚、何れも清新の氣に満ちて巻を措く 能はざらしむ、或人は筆致呉春に似て構 圖はそれ以上なりと賞讃せられたり、日本畫はすでに今日以上進むべき道なしと いふ人に、此一巻の畫譜によつて啓發せらるゝ處定めし大ならん。
◎女子東京遊學案内 今井翠巖の著にして四六判六百餘頁、遊學の指針として各種の注意を擧げ、諸學校の規則を漏さず網羅したり、説明親切なれば、好指導者として信頼するに足らん(定價五十八銭日本橋本町博文舘)
◎小學校に於ける最新圖案敎授法
  石田凌風著
  日本橋區本石町三丁目 寳文舘
  菊判洋装挿圖四十一三〇頁
  定債六十銭
 著者は小學校に於ける圖按教授の参考として編纂されしものなれど、一般圖案の何者たるかを知るに適當の書なり。特に色彩に關する理論は、説明懇切なれば、繪を學ふ人にも益多かるべし。
◎圖案鏡 これは書物ではない、方三寸程の鏡を二枚折屏風のやうに蝶番にて合せしもので、これを繪畫や文字の上に立てゝ見ると、種々なる面白い模様が現はれる。單に實用のみならず、誰れでもこれによつて二三時は知らずに遊ふことが出來やう、小學時代の子供の敎育玩具としても面白い。(石田凌風氏考案、定價十二銭他に小包料を要す、京都府龜岡北町内藤半月堂發賣)
◎學生文藝 第一號 内容は其名の示すが如し。中澤氏筆の三色版油繪あり、鴎外氏の小説あり、其他讀むべき文字多し(一部十五銭、本郷駒込千駄米林町聚精堂發行)
◎模範第一號各方面にわたり模範となるべき記事を集めたものであらゆる階級の人々の修養の上に益すること多からん(定價十六銭五厘、神田旅籠町一丁目文光堂發行)

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