朝鮮の俚諺(帝國文学)
『みづゑ』第六十八
明治43年11月3日
△寢る處を見てから脚を伸せ。
自分の力を顧みて寫生の塲處を選べ。
△一晩中哀哭して誰が死んだッたか知らぬ。
△終日慟哭して誰の夫人の葬式か知らん。
一日寫生しながら何を描いたのか自分でも分らぬ。
△一匹の馬背に鞍二つ置かれるか。
あつちの森も描きたい、こつちの家も入れたい。
△物事が少し判りかけたら老耄した。
少し繪のことが分つて來たらさて忙しい身上になつた。
△針鼠は自分の子供は柔で可愛らしいものと思つてる。
自分で畫いた繪はいつもお美ごとで
△京城を危い崖だと聞いてから果川からして這つてゆく。
樹木や草を畫くのはむづかしいものときいてからさつばり筆が進まぬ。