寄書 要塞地帶より
S、YVSHI生
『みづゑ』第六十八
明治43年11月3日
關門海峡の風光は實に明媚であります
然し砲臺が多いので、風光の美は其十分の一も描現す事は出來ません、又下關市内には川が無い、隨つて風景は平凡です、
けれ共、一歩郊外に出ると隨分面白い處もありますが、何分市内は勿論豊浦郡一帯、九州では門司、小倉、若松など皆要塞地帯でありますから、手續せずに寫生して居ると大に失敗致します、諸氏が、若し當地方面に遊ばれたら、左の如く和英二樣に書てある目標を見られるでありませう。
許可無くして要塞地帯内及其外方三千五百間以内に於て水陸の形状を測量、撮影、摸寫、録取する事を禁ず犯したる者は法律に依り處分せらる可し陸軍省
それで、寫生するには必ず許可證携帯の上で無てはいけません許可證は、當地要塞司令部へ願書持參、又は返信料封入で申込ので御座います、日光では一週三圓の許可證料を取ると、石川先生の御話にありましたが、當地司令部では無料で下附されます、參考の爲め左に願書の書方を示して筆を置ます。
寫生願
一、目的、何々研究の爲
一、區域、何處
一、期限、明治何年何月より何月まで
右御許可相成度要塞地帯法施行親則に依り此段奉願候也
年月日住所
氏名★
下關要塞司令部
何誰殿