談片


『みづゑ』第七十 P.8
明治43年12月3日

 寫生をするのに、場處の組立ばかりを選ばないで時といふことも考ヘてするがよい。詰らない場處でも見る時間によつて非常に面白くなる。また、畫問見て調子の整はない色や何かある處でも、朝早くとか夕暮に見るとマルで別の感じになるから、寫生をやる人はコンナ處を覗ふがよい。

 一枚の繪、それは可なり物もよく現はれ感じもよく出てゐるとしても、コレが傑作とは云ヘまい。色の使ひやう筆の動き方などが氣持よく現はれてゐないと觀る人に快感を與へない。一つ一つ見て批難する處の無い繪でも、一見して全體に不愉快の氣があつては面白くない。

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