自分の技倆と繪について


『みづゑ』第七十一
明治44年1月3日

 非力の者が強力の敵に向ふに、己れの身を全ふして其敵に勝たうと思ふのは無理だ。此際自分の身も殺される氣で、敵を斃す决心、即ち死身になつて掛れば、必ず其敵を斃し得べく、また自分の身に害を受けない事もあらう。
 繪でも同樣だ、自分の技倆に及ばないやうなものも、時として試みなければ進歩しないが、このやうな場合、その繪を立派に畫き上げやうなど思ふと却而失敗する、それよりも、繪はどうなつてもよい、飽迄目的物の眞を捉えやうとの决心でやつたなら、何物か得る處があつて、時としては其繪も立派なものになるかも知れない。

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