寄書 初冬の一日(大木村にて)
石川幸三郎
『みづゑ』第七十一
明治44年1月3日
此所は、東京の東三里、大木と云ふ村です、私は今中川の下流、木下川の岸づたひ堤の上を目的地なしに歩行いて居る、過日の水で荒れ果てた田の中には、純白な白鷺が數十羽、群をなして下りて居る。葦の陰から、白帆が二つ見えて下つて來る。若菜を擔つたおぢいさんが丁寧に言葉をかけたので、私は少々まごついた。蓼、★石草、紫宛、莠などの茂つな上に腰を下ろして、氣持よい、初冬の風に當りながら下書をかいて見た。
石川幸三郎
『みづゑ』第七十一
明治44年1月3日
此所は、東京の東三里、大木と云ふ村です、私は今中川の下流、木下川の岸づたひ堤の上を目的地なしに歩行いて居る、過日の水で荒れ果てた田の中には、純白な白鷺が數十羽、群をなして下りて居る。葦の陰から、白帆が二つ見えて下つて來る。若菜を擔つたおぢいさんが丁寧に言葉をかけたので、私は少々まごついた。蓼、★石草、紫宛、莠などの茂つな上に腰を下ろして、氣持よい、初冬の風に當りながら下書をかいて見た。