寄書 會友諸君へ御相談

一會友
『みづゑ』第七十二
明治44年2月3日

 日本水彩畫會の規定の一部が改正されて先生に御批評を願ふ繪は是迄毎月であつたのが隔月になつた。種々水彩畫發展のため繁多な御用の多い先生の勞を増すといふことは會友の増した喜びは別として先生のために千萬御氣の毒の譯で。改正に就ては何等異議なきのみならず吾々の方でもつと早く氣をつけて御遠慮申さなければならぬ次第であると私は思ふのでみる。それで世間を見ると、たかが十七字三十一字の俳句や歌を見て頂くのにも一句何銭といふて添削料を差出さねばならぬ。然るにそれ等と異つて面倒で時間潰しでその上誰れにも出來ない初學者の繪の批評をお願するにいくら先生の方で報酬は入らぬと言はれたとて平氣で御批評をうけるといふことは實に虫のよい話だと思ふが。然し先生の宣言で見ると金銭づくでやつて下さるのでないから一枚何程と極めて差上ても快よく受けては下さるまいと思ふ。此處諸君何とかよい御智恵を出じて先生に御迷惑をあまりかけず吾々も相應の報酬を出して今後は批評を願ふやうにしたいと思ひます。如何。
 

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