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『みづゑ』第七十二
明治44年2月3日

□原色版『天城山麓』は昨年一月の寫生にしてワットマン四ッ切大に御座候。
 仝『雨後の夕』は甲州鳥澤の町にしてワットマン四ッ切大に御座候。仝『興津海岸』は強き夕日の色彩を主として寫せしものにて、時は一月初め、大きさは一尺四寸に九寸程に御座候
□次號には『風景畫法のうち圖畫』『靜物寫生の話』『三脚物語』『ワッツ論』の續稿を出すべく、其他新しき講話も出べく候
□澳國水彩畫家ヘンリーデヒット氏に關する記事は二三の挿繪と共に次號に掲出可致候
□次號の挿繪は、原色版に磯部氏の『早春、』藤島氏の『銚子海岸、』大下氏の『雪の駒ヶ嶽』其他、小豆島風景の石版及寫眞版、並びに一行の肖像等に御座一候
□桑田式包装は當分本會にて調製不致候間、厚きボール11枚を合せその中に畫を挿み糸に絡げて御送り下され度候。
 猶送る時の都合よきのみならず、當方より返迭致す時に出來るだけ手數のかゝらぬやう御注意有之度候
□寄書はなるべく簡單に願ひたく、また完結せしものにあらざねば登載致さず候。次に繪畫に何等の關係なき汽車沿道の光景のごときは、よほど面白きものでなくば採用致兼候間、そのやうなものは御見合せ下されたく候
□日本水彩畫會十二月例會は十八日開會、出品百餘點、同日デッサンコンクールの結果を報告致候。晝の部第一席相田寅彦氏、第二第三席赤城泰舒氏、夜の部第一第二席水野以文氏に御座候。批評終つて忘年會に移り夜に入つて散會致候□同一月例會は二十二日午前開會、出品畫五十余點に對し、藤島、磯部、織田、大下諸氏の批評あり。午後より新年會を開き、喜劇、琵琶其他數十番の盛なる餘興あり、終てカルタ會を催ふし夜分散會致候。詳細は次號に報導可致候

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