讀者の領分
『みづゑ』第七十二
明治44年2月3日
■新年お目出度う、相變らず諸賢の御勇健を祈る(愛知縣夕暮生)■諸君!明けましてお目出度う、今年も不相變繪葉書交換及御交際の程をお願いたします。新年號の『みづゑ』「額縁と繪畫」は頗る面白く拜見、「水彩畫の不振」は有益のお話、「三脚物語」は嬉しかつた、原色版は前號よりは感心出來なかつた(神田周三)■『みづゑ』六十九は非常によい出來だ、申分がない、中でも「麓の流」は原畫を見るやうに思はれた(見ないけれど)、記事もいゝ、「春鳥畫談」は讀むでゆくうちひとり二度三度うなづかれた、また七十の「初冬」は實に初冬らしく、「能の面」は僕のやうなものには爲めになる、「雪の山」の松の色(日のさした)はよい、僕はいつも松に失敗するが此繪で大に得る處があつた、近來原色版が進歩したのは喜ばしい事である(大阪洗帆生)■十一月の『みづゑ』(臨時増刊號)の記事中、汀鴎氏の「白峯の麓」の十一節以下十七節あたりまで藤村詩集を讀むごとき懐かしさを感じた、特にトンボの小屋の一夜は躍如たるものがある(内藤新宿、○○生)■眞面目なる肉筆水彩繪葉書交換希望即時返葉(伊豫松山市萱町二丁目七五、吉田伊勢雄)■桑田君にお答申上候、B生即ち小生に御座候、永遠に自然の見として御交際を願ふ(神戸市京町十番秋馬會々員伴利也)■初學の吾々此度同好數名を得てアケボノ洋畫研究會を起し廻覽畫帖を發行してゐます同好諸君の御賛成を願ひます規定は二銭郵券封入に申込下さい(神戸市兵庫神明町三四、大出方MR
■當地方にも夏期講習を一度開いて下さいいつも關西方面のみでまことに残念に思ひます當地方には各所に温泉場もあり海水浴場もあり會場には困らぬことゝ思ひます特に松島邊に開かれたなら他地方の會員も多く集まりませう幹部及有志の御考慮を煩はします(仙臺河南生)