繪の飾り方について


『みづゑ』第七十三
明治44年3月3日

△繪を見るのには、其繪の對角線の二倍以上を離れるのが元則になつてゐる。對角といふのは、一方の上の隅より他方の下の隅迄の斜めな線を指すので、對角線が二尺あれば四尺以上離れて見るべきものである。それ故室内に額を懸ける時は其心得がなくてはいけぬ。
△光線の不充分な場處は適當ではないが、またあまりに窓近く強い光線の射す處もいけない。高い窓、又は天井から柔らかに落して來る光線が一番よい。普通の日本座敷ではそのやうなお誂向にはゆかぬが、なるべく光線の入る窓なり緑側なりの正面を避けて、光りを側面から受けるやうにしたらよからう。
△傾斜の度は見る人の目に對して。平面になるやうにすればよい。懸ける處が高ければ傾きが強くなる、低ければ殆と傾なし、壁と平行してよい。椅子につくのと座するのでは幾分傾きに相違が出來やう。
△額は必ずしも鴨居の上に懸けなくともよい。鴨居から糸を垂れて、其下へ懸けてもよく、又大きな縦畫などは、鴨居を跨いて懸けても差支はない。
△繪畫の保存上避けたいものは、直接若くは強い日光の反射、煙草の煙、アンモニヤの臭氣、濕氣等が重なるものである。
△額緑の蠅を防ぐ法といふのがある新聞の記事に見た。かうである。

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