讀者の領分


『みづゑ』第七十四
明治44年4月3日

■七十三號の『みづゑ』が届いた時は飛び立つ程嬉しかつた、表紙は時々變へてほしい、原色版は非常によくなつた、『駒ヶ嶽』は寫眞で見たが全く想像に反してゐた、見てゐると知らず知らず幽寂な境にさまよはせる。『銚子海岸』は心地がよい誰れにも好かれやう。『早春』は一番好きだ、調和が何とも云へない、堪らなくよい。『日記抄』は先生の御消息が分つて嬉し。『早く來た人々』は僕等には意味が無い(札幌K生)◎『駒ヶ嶽』の寫眞になつたのは曇つた日の寫生、七十三號のと異ふ)■七十三號の『駒ヶ嶽』『銚子海岸』は構圖に飽きます。『早春』は好もしく拜見。諸先生や研究所の寫眞はいつ見ても嬉しい。『日記抄』と『三脚物語』は樂しく拜見します、無趣味な輩の山林濫伐は殊に遺憾です。小豆島紀行の會友に限り割引は不公平ですねー(自然子)■原色版の號を重ねるに從ひよくなつてゆくのは喜ばしい。前號『駒ヶ嶽』と『早春』は私の心がどれ程動いたらう(鎌倉堀谷)
■七十二號の『興津海岸』は余の目を離れぬ。『天城山麓』は嬉しい繪である。次に諸君、當分のうちハガキ交換絶對的謝絶(相州鎌倉長谷堀谷汀風)■風光明媚をを以て知られたる山陰の地より報ず。本年八月、此地に於て大下先生の御出を願ひ、短期水彩畫の講習がある、諸君會員の一人となつて一度來つて豊富なる畫材に飽きたまへ(西伯、黒面冠者)■近頃多數の同好が會を作られること心強く感じます、當郡に於ても五六の同趣味者を得て、一ヶ月二回づゝ集まつて鉛筆畫の寫生をしてゐます、何れも頗る熱心です(高野山下TY)■前號に熱海の住人として投書した人は、水彩畫界に其人ありと知られた畫伯關先生だ。氏が今度の講習會に出席されて、君のローカルカラーを發輝したのは、合宿所で演じたお染久松の芝居であつた。色の白い今業平の様な好男子が、刀の代用に三脚を腰に差して宿の女中の糸ちやんをお染にして演じた時は、静岡中へ響く様な大喝釆であつた最後の茶話會に拝觀し得なかつたのは殘念であつた。講習はたしかに利益が多い先生並びに参會諸君の健康を祈る(埼玉感じ生)■吾が鹿兒島市に水彩畫を敎へて下さる人か、又は研究所は無きか、御存知の方は敎へて下さい。次に斯道に忠實なる肉筆繪葉書交換を希望す(鹿兒島市本千石町五六中島重治)■當地少年畫家關正造君は、二月二十一日終に逝去された。同氏は緑泉君とよばれて、本誌に寄稿されたこともある、同氏と交ありし方に御知らせします(信濃上田町パレット生)■兵庫に於ける『みづゑ』讀者及同好の士、機會を見て集まり相談の上研究會を組織してはいかに(兵庫新在家町四〇喜多卯太郎)■『みづゑ』讀者諸兄姉よ、小生今年四月より多忙の身と相成候へば、繪葉書交換は以後三年間御斷り致し度候。是に繪葉書を給はりし十數人の諸君に御禮申上候(靜岡市在沓谷深澤信子)

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