問に答ふ
『みづゑ』第七十五
明治44年5月3日
■一 曇れる日の藁崖根及建築物の雨戸及柱などの風雨にさらされて白く見ゆるは如何なる色彩を用ひて可なるや二 大下先生個人にて著はされし(水彩畫階梯を除き)書籍ありや三 ニユートン製のチユーブ入を使用するに拘はらず繪がガサガサになるが熟練の足らぬ爲めにや(○△生)◎一 このやうな質問には一番困る、見えた樣な色をおつけなさいといふより他に言葉が無い、曇つてゐても晴れてゐても他の物體の反映もあれば反射もある、また洒さされて白くなつたといふても程度がある、木質にもよる、其場で一々説明したらとに角、筆の上でに何共しかたがない。此際あまり其色彩に拘泥せすに、感じて現はすやうにしたらよい、其點一部分だけにせずに、全體を旨くかいて其の心持を出すやうにするのです三 繪具の爲めでなく技術の不足である、『アマチユーの繪』といふ講話を見たまへ二 なし、そのうち『水彩寫生旅行』といふ書物を出す筈■ 圖案研究の良書を知りたし(無名)◎『一般圖按法』といふもの丸善書店にあり一通りは分る(定價貮圓)外國の分は同店へ問合はされたし■一 油繪スケッチ板金縁額の代價及賣店を知りたし二 日本水彩畫會若しくは春鳥會に入會すれば油繪の批評も受くることを得べきや(逸名)◎一 其樣式によつて一樣ではないが、安いのは壱圓位ひからある。普通二圓も出せば可なり立派、賣店は京橋竹川町八咫屋、芝新櫻田町磯谷、小石川指ケ谷町百一山本商店等、照會は山本がよからう二 洋畫なら何でも批評をする。