談片


『みづゑ』第七十七
明治44年7月3日

 隅から隅迄繪具や筆が行渡つて畫いてあるものを繪では無いやうに言ふ人もある。繪は必ずしも筆や繪具が畫面に萬遍なく着いてゐなくともよからうが、着いて居てもよい。繪はどういふものだと狭い範圍に極めてしまいたくない。靜物畫も叮嚀に實物を見るやうに畫いてあるのもあるし、圓い林檎を四角に畫いてあるのもある、どちらが悪いとか佳いとかいふのは其時代と見る人々の考だ、二に二を加へて四になるといふやうなものではない。

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