讀者の領分


『みづゑ』第七十七
明治44年7月3日

■瀬戸内海號は素敵な出來だ、紀行の流暢なる文字を見て遊意頻りに動く、此夏休みにはせめて松山迄も出掛けたい(流泉子)■『みづゑ』瀬戸内海面白く拜見、こんな雜誌を是非毎年二三回出して下さい、先生達のお骨折には御氣の毒なれど、山中の民には言ひがたい慰籍であります(信濃更科生)■『みづゑ』瀬戸内海は定價は增したが、この位ひよいものは時々あつて欲しい、その上普通號も紙數を加へてほしい(坂倉喜一郎)■『みづゑ』七十六號は眞に身は瀬戸内海に居る樣な心地がした、原色版挿のと紀行文の多いのは喜ばしい、挿畫の出來不出來は敢て問はぬ(湖南堀谷)■今夏廣島で講習會がある趣兩手を學げて大賛成、屹度願ひます、就ては入會するのに中學三四年の初學者でもよいのですか(廣島S、H、生)◎廣島で講習がある筈であつたが、主催者の一人家族に病人が出來たので準備萬端差支たから來年迄延期したとの申込それで残念ながら見合せにします■僕は新參の讀者、諸君よろしく、僕は畫を描くのと『みづゑ』とが何より好きだ。飯より好きなのは無論、否、僕は飯は食はないと死ぬから止むを得ず食ふのだ、此他にどんなものを引張り出して來たつた一等好きなのはやつばり繪、但下手の横好きなり(北の島にてSM生)■緑泉關正造子の逝去を悲しむ、噫(自然子)
■繪業書取放しの人往々あり、『みづゑ』讀者にかゝる冷淡にして不徳義なる人あるは遺憾なり、三月中旬にも深澤氏より返葉なし(東北の人)■『みづゑ』讀者の大部分は地方の人で、水繪趣昧のために讀むのだらうと思ふ、僕はパステルやチヨーク畫などを原色版にするよりは、矢張りスタデー的の水繪でも出して頂きたい。それに、記事も一寸初學に解し難い英語や術語で持ち切つたものは面白くも利益もない樣に思はれるが如何(ひたちの人)

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