■■■


『みづゑ』第七十八
明治44年8月3日

□原色版『日ざかり』は七月下旬榛名神社附近の寫生にして、原畫の大さはワットマン四ッ切。この繪は暑いといふ感じを主として畫いたもので、それを現はすために色彩の如きは原色に近きものを嫌はず用ひたり。『花のスタデー』は忠實に寫生を試みしだけにして、原畫は十六切位ひの小品なり。『夏の夕暮』は、東京千駄ケ谷附近の圖にして、原畫は四ッ切大。製版の後ち樹木の色は透明の感じになりしが、原畫は不透明の綠なりし、此繪は製版が可なり巧みに仕上りたり。
□次號挿繪の確定せしものは、赤城泰舒氏の『書見』これは去年の文部省展覽會に出品せしもの。石川欽一郎氏の『丸の内』これは例の簡潔なる筆にて、日比谷公園附近の夕暮を寫生せしもの、他の二葉は未定なれど、三宅氏相田氏大下氏の作のうちを出す筈なり。
□次號の記事は、石川氏の『風景畫法』。矢代氏の『偉大なる繪とは何』。大下氏の『靜物爲生の話、色彩の部』。丸山氏の『渡欧紀行』其他三脚物語、日記抄、寫生地案内等例の如し。
□九月號發行は、都合により一週間程遲延するやも知れず、豫じめ御承知を乞ふ。□本誌は挿繪其他の都合上、增刷減刷共自由ならず、從つて讀者が增しても刷高を增すことが出來ないので、時に月末に到らぬうち品切となる事あり、それ故御注文は可相成前金に願ひ度、また前金切の時は、次の分を直ちに御拂込ありたし、中には前に別にハガキを以て通知を發しても其儘にして置て、後に至つて品切を残念がらるゝ方あり、何卒そのやうな事なき樣御注意を願ふ。
□發行日ょり遲れる時には、必ず前以て斷り置く筈なり、夫故、斷りなしに、發行日より相應の日取を過ぎても雜誌來着の時は、途中紛失なれは、可相成品切にならぬうちに御通知に預りたし、發送は帳簿と二度も引合せて送るのに、毎月少なからぬ未着の報に接し、途中紛失の多きには實に閉口してゐるのなり。
□松江市の講習會々場は、師範學校附屬小學校と確定、申込期は過たが、志望者は問合せて見たまヘ。敦賀は申込期は八月十日にして、福井縣師範學校内野村厚生氏が事務を取扱ひ居れり。
□大下氏著『水彩寫生旅行』は、既に出版せられたり、内容は原色版二十九寫眞版十餘枚にして定債貮圓五十錢、特價二圓の由、本誌に關係ある向ヘは、それよりも安く實費にて頒つ筈になり居れり。
□又『寫生畫の研究』は、近々下谷櫻木町晩成處より出版せられるべく、定價未詳なり、これも幾分の割引をなさしむる筈なり。

この記事をPDFで見る