問に答ふ


『みづゑ』第七十八
明治44年8月3日

■一非常に細かい花を畫くにバックにムラが出來ない方法二『みづゑ』七十七『白百合』程の省筆にて、初學者も大膽に畫いて差支なきや(ABC)◎花を畫くに紙の地を殘すとか、、又は畫いた花の色を殘して、背景を畫くのは初學者には困難であるが、熟練すればさ程に苦しまなくとも趣を取ることが出來る、アトでホワイトを用ひる場合、又は一面に塗つて花だけ小刀で削り取る場合、毛の剛い筆で洗取る場合もあつて、其時の感じに從ひ一番都合のよい手段をとつたらよからう。二あのやうな大タイのスケッチも稽古に必要、また本號にある小林氏の『草花』のやうな細かいスタデーも必要細かいスタデーの出來る人でないと、粗いスケッチはうまく感じが出ず、粗いスケツチの出來る人でないと、細かいスタテーいを畫いても局部にのみ偏して大タイを忘れる、繪は粗い描寫で成ってものでも細かい意味がなくてはいけぬ、細かく畫いた繪でも大タイの感が掴むでなくてはいけぬ、■寫生中蚊や虻ブト其他虫類の攻撃を防ぐ方なきや(SM生)◎吾等も常に苦しむ處にて、手だけは手袋を用ひ、脚は靴下で大ていは避る事が出來る、虻の攻撃は困る、プトの目の前をグルグル廻るのは一番閉口、蚊やり香の類又は線香など側に置くもよからん、焚火をすれば一も二もなく虫は去るが、暑い時でもあり自分も困る、讀者諸君のうちに防禦の實驗ある人は御知らせを乞ふ■瀬戸内海號の圖にある白帆は紙の地にやホワイトにや(綠水)◎多くは畫きて後に其部分を水にてぬらし小刀にて削り取つたり。

この記事をPDFで見る