松江にて
『みづゑ』第七十九
明治44年9月3日
城山公園へ往つて見ると、到る處にお茶屋があつて、名物櫻餅の旗が風に飜へってゐる。大道といはず、樹の下といはず、芝の上にも、家の蔭にも、三脚を据へて、連中は頻りに筆を動かしてゐる。眞向から夏の日に照りつけられて、平氣でゐるのもあれば、日蔭に居ながら、扇遣ひの忙はしいのもある。やさしい積りで取掛かかつて、存外むつかしいのに閉口してゐるのもあれば、思ひのほかよく出來たので、頗る得意でゐるのもある。さまざまで面白い。
『みづゑ』第七十九
明治44年9月3日
城山公園へ往つて見ると、到る處にお茶屋があつて、名物櫻餅の旗が風に飜へってゐる。大道といはず、樹の下といはず、芝の上にも、家の蔭にも、三脚を据へて、連中は頻りに筆を動かしてゐる。眞向から夏の日に照りつけられて、平氣でゐるのもあれば、日蔭に居ながら、扇遣ひの忙はしいのもある。やさしい積りで取掛かかつて、存外むつかしいのに閉口してゐるのもあれば、思ひのほかよく出來たので、頗る得意でゐるのもある。さまざまで面白い。