日誌
『みづゑ』第八十
明治44年10月3日
七月三十一日 晴 午後六時三十分新橋より乘車。
八月一日雨より晴午前七時京都にて京鶴線乗換、十二時 舞鶴海岸着。午後四時三十分連絡汽船阪鶴丸乗船。
八月二日 晴雨不定 午前五時三十分出雲美保關に上陸、美 保館に投す。寫生畫二枚。
八月三日 晴雨不定 地藏崎燈臺附近寫生一枚。美保神社前 一枚。松江より奥村杉本兩氏來泊。
八月四日 晴 美保關にて寫生一枚。午前九時汽船にて松江 に向ふ。大橋棧橋にて竹下其他會員諸君に逢ふ。皆美館投宿。講習會場検分。城山公園寫生の場所を見る。
八月五日 雨より晴 水彩畫講習會開會。夕刻松崎水樓の歡 迎會へ臨む。
八月六日 晴 夜分日の出館に於ける茶話會に臨席。
八月七日 晴
八月八日 晴皆美館より宍道湖寫生一枚。
八月九日 晴 物産陳列館を見る。
八月十日 晴 夜分小舟にて嫁ヶ島及天神社に遊ぶ。
八月十一日 晴 皆美舘より裏手寫生一枚。
八月十二日 晴 竹下氏と共に出雲大社参拜。杵築海岸見物。
八月十三日 晴 午前七時四十分松江出發、鳥取市見物。夕 刻浦富着、觀潮樓に一泊。海岸寫生一枚。
八月十四日 晴 午前七時汽船大成丸にて浦富出帆、正午城 ノ崎着、うを屋に一泊。
八月十五日 曇より雨 午前七時四十分城ノ崎出發、播但線 を姫路に乗換、夕刻京都着。松木氏方一泊。
八月十六日 暴風雨 曇朝、河合氏を訪ひ、午前十時發、 北陸線を午前三時敦賀着。具足屋投宿。
八月十七日 晴 午前七時敦賀出發、伸にて全十時若狭早瀬 着、觀月亭に投宿。午後久々子湖寫生一枚。
八月十八日 半晴、小雨 午前、小舟にて久々子、中ノ海、 三方湖見物。裏見にて寫生一枚。
八月十九日 晴より曇 午前、日向湖を經て裏見に出で、丹 後街道探勝。寫生一枚。午後樓上より湖畔寫生一枚。
八月二十日 小雨、晴 朝、海岸寫生一枚。七時早瀬出發、 敦賀具足屋に投宿。講習會主催者二三氏に逢ふ。
八月二十一日 晴 今日より一週間、高等小學校に於て水彩 畫講習會開會。午後氣比神社へゆく。
八月二十二日 晴 午後松原公園へゆく。
八月二十三日 半晴 今日より五日間、敦賀敎育會のため、 毎日四十分間の講話をなす。午後金ヶ崎へゆく。
八月二十四日 大雨。
八月二十五日 晴 午後金ヶ崎へゆく。夜分敎育會の招待に より近清棲へ行く。次に若源に於ける會員茶話會に臨む。
八月二十六日 晴、夕刻曇 午後松原公園へゆく。
八月二十七日 晴 講習會全部終了。午後四時五十分の汽車 にて名古屋に向ひ、支那忠一泊。
八月二十八日 晴 午前熱田神社參詣。同十一時發汽車にて 鹽尻を經て飯田町へ向ふ。
八月二十九日 曇 午前七時半歸宅。