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『みづゑ』第八十
明治44年10月3日
□本號は『裏日本』の紀行が重になつたので、挿繪も自然其當時の製作のみである『美保の關』は雨のそばふるやうな日を殆ど一日がゝりに寫生したもの、石垣の如きは筆者に考があつて殊更に細かく畫かれてある。『黄昏の宍道湖』は二日程續けて寫生された。『浦富の夕陽』は同地觀潮樓の二階から寫したもので、このやうな圖は中央から切ると二枚になりたがる、前の長い棹があるので僅かに連絡を保つてゐる、但、棹はわざわざつけたのでなく現場其儘ある。『久〃子湖』は二時頃から約一時間程の寫生て、前記四枚共何れも大きさは八寸に一尺二寸、またどれも二階から見た寫生である。
□次號の記事には、山桝氏の『現在英國ローヤルアカデミーの面々』。矢代氏の『偉大なる繪とは何』。大下氏の『靜物寫生の話、色彩の部』。同氏の日記抄。同じく『文部省展覽會の水彩畫評』。汀鴎氏の『箱根古道』等掲出さるべく、挿繪は三宅克己氏の『ブローヂの秋』。藤田紫舟氏の『松江大橋』。寺田季一氏の『暖日』。大下氏の『湖上の雨』等登載せらるべし。
□『みづゑ』の發送は、必ず帳簿と照合して、入念に洩のないやうにするのであるが、轉居の通知が遲く前の住所へ發送したり、また注文主が、自分の宿所姓名を走り書きして文字が讀めなかつたりすると、遲着叉は發送不能といふことになる、それでなくとも、毎月十二三册は途中紛失がある、其際に未着の御通知があれば、雜誌は幾度でも差上るが、調べて見て一度出した證據のある分には、肩書に『再送』と書いて置く、これはこちらの不注意でないと申事を御知らせするためで、代金を請求する爲めではないから、再送の際と雖も別に御送金に及ばない。
□途中の紛失がない迄も、郵便局で★〃開かれ見られるために、雜誌が傷むで困るといふ人がある、郵便局員は檢査する權利があるのだから止を得ぬが、若し袋のまゝでなく、細く巻いて送つたら、少なくとも繪に折目はつくまいと思ふ、それ故巻て送ることの希望の方は、其旨代價御拂込の時書へ添へられたい。
□振替貯金は、拂込むでから多少の時日を經ないと通知が來ない、引換などよりは遲い。通知の來ないうち雜誌の催促が往々ある、御注意を望む。それから、代金拂込の時は手數料一銭を必ず加へて下さい。
□東京洋畫材料供給會は振替貯金(東京四三七三番)に加入してゐるから。本會の口座へ本會の拂込金と同時に御送金ありては迷惑、また、注文は一切直接に願ひたく、本會では取次はしない。
□大下氏著『寫生畫の研究』は、京橋區南傳馬町目黒書店(振替東京二八〇九番)の發賣で、定價八十銭送料八銭。本會及日本水彩畫會々友に限り、定價の一割五分引にて注文に應ずべく、本會にても取次すべし。